こんにちは、きんどるどうでしょうです。新企画「きんどうが気になってる新刊を代わりに紹介してください(仮)」。1・2巻同時発売されたジャンプコミックス『寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。』のレビューをいただきました。
こちらは他ストア対抗セールで恐らく本日10日まで25%ポイント還元が付与されていますね。本作はもともと2ちゃん?のスレッドから始まったSS作品でメディアワークス文庫から「三日間の幸福」というタイトルで発売されたもののコミカライズ。
毎日を無気力に過ごしていた青年が寿命30年を30万円で売り払い、残された余命3ヶ月で幸せになろうと躍起になるが尽く裏目にでてしまう。空回りし続ける彼が何かに気づいた時残りの寿命は……という感動作。原作にはたくさんの高評価レビューがついてますので気になる方はあわせて是非 メディアワークス文庫 > 『三日間の幸福』
寿命を売る気はありませんか? あなたの寿命は一年いくら? 『寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。』
はじめましての方は、はじめまして。二度目だという方はまたお目にかかれて嬉しいです。このたび書評を書かせていただきます、「A.薬缶α@akasat_aka_naha」と申します。よろしくお願いいたします。
今回、ご紹介させていただくのは「寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。」というジャンプコミックスです。ジャンプコミックスにあるまじき、なんとも擦れたタイトルですが、もしかしたらこのタイトルだけでピンとくる方がいるかもしれません。
この漫画の原作は2013年の5月に立ち上げられた同名のスレッドであり、多くの反響を呼んだSS作品です。2014年には「三日間の幸福」というタイトルでメディアワークス文庫から書籍化されており、こちらも高い評価を得ています。
まともな大人になれなかった人びとの痛ましさ
原作者であるげんふうけい、もとい三秋縋先生の作風として、哀愁の漂う雰囲気、現代人が抱える生きづらさ、言葉に出来ない寂寞感などを切実に描いている点が挙げられます。この作品もまた、そうした三秋縋先生の魅力が色濃く反映されています。
物語は主人公がバイト先をクビになるところから始まります。主人公は生きるために仕方なく、部屋にある本やCDを売る決意をしますが、どちらも大した額では売れませんでした。しかし主人公の様子を案じた古本屋の亭主がとある提案をしてきたのです。
それが「寿命を売る気はねぇか?」という提案です。当然のように主人公はこの奇妙な提案を訝しがります。しかし背に腹は替えられないと仕方なく寿命の査定に向かいます。そこでどのような結果が待ち受けているかも知らずに。
私たちの寿命っていくらで売れるんだろう?
もしかしたらそんな妄想をしたことがある方も多いのではないでしょうか。かく言う私も子供の頃や中学生の頃に、そんな妄想をしていたような気がします。そのときはどんな結論が出たか覚えていませんが、単純に生涯年収の平均である2億円あたりで満足していたような気がします。
さて、査定の待ち時間中、主人公もまた、そんな想像を働かせます。
「子供の頃の自分は30億なんて考えていたけれど、今の自分の人生なら少し控えて3億といったところだろう……」
そんなことを考えていた主人公に突きつけられたのが「余命30年で30万。1年あたり最低買い取り価格の1万円だ」というまさに桁違いの現実でした。そして追い打ちをかけるように、査定は当人の「幸福度」「実現度」「貢献度」などといった今後の人生の充実度によって行われるという説明がなされます。
まだ自分の人生には可能性が残されているはずだ! という諦めを捨て切れていなかった主人公は、思いも寄らぬ形で突きつけられた現実にショックを受け、捨て鉢気味に寿命を売り払ってしまいます。主人公に残されたのは30万円の現金と、端数として切り捨てられた寿命3ヶ月だけでした。
そして始まる奇妙な共同生活
翌日、主人公の元に査定を行った女であるミヤギが「監視員」として現われます。監視員とは、寿命が1年を切った者が自暴自棄を起こし、罪などを犯さないように派遣される者のことです。最初は監視されることに居心地の悪さを覚える主人公でしたが、気づくとミヤギは唯一すべてを話せる相手として貴重な存在になっていました。
そして主人公は「死ぬまでにやりたいこと」をリストアップし、ひとつずつ消化してゆく作業に入ります。
・大学に行かない
・美味しいものを食べる
・綺麗なものを見る
・遺書を書く
・同級生と会って話をする
・初恋の人と会って想いを打ち明ける
これは主人公のリストの写しですが、そのすべてが、やろうと思えばいつでも可能な事柄です。だけど実際に自分が「死ぬまでにやりたいこと」をリストアップするとして、これ以上に有意義なリストを作り上げられるかと問われれば甚だ疑問です。
それじゃあ30万円と3ヶ月で何ができる?
非情な現実を突きつけられた主人公は「死に物狂いで努力して、この世界に一矢報いてやる!」と決意します。しかしそんな彼に対して、監視員のミヤギが「スタートラインに立っただけ」という過酷な評価を下します。
だけど私は主人公の気持ちが理解できるような気がします。「あと数十年は死なない」という想いが、甘えという足枷となって、すべきことを後回しにしてしまう弱さになります。
そしてその「弱さ」は何か劇的なきっかけがないと拭い去れないものです。たとえばそれは「自分自身の死」が明確な形で突きつけられたり、だと思うのです。
だからスタートラインに立てただけでも、私は素直に主人公を羨ましいと感じます。何をするにしても、スタートラインに立っているのと、立っていないのとでは、大きな違いがあるのですから。
では、やっとの想いでスタートラインに立った主人公は残された3ヶ月で何を成そうとするのか。そして何を成すことができるのか。その答えが少しでも気になった方はぜひとも「寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。」を手に取ってみることをおすすめします。
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寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。 1
毎日を無気力に過ごしていた青年クスノキは、ある日寿命を買い取ってくれる不思議な店の噂を耳にする。金に困って寿命の大半を売り払った彼は、余命3か月を「監視員」のミヤギと共に過ごすことになるが…。三秋縋の人気小説「三日間の幸福」を完全コミカライズ。
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。 2
寿命の大半を売り払ったクスノキは、僅かな余生で幸せを掴もうと躍起になるも、悉くが裏目に出てしまう。そんな中、最後の支えである幼馴染みのヒメノと再会を果たすが…!? コミックスだけの新規描きおろしエピソード「存在の言うまでもない軽さ」を収録。
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— きんどう (@zoknd) July 3, 2017