こんばんは、きんどるどうでしょうです。Amazonプライムビデオ見放題で配信中の地上波放送ではちょっとできない実験的な取り組みをお送りする『今田×東野のカリギュラ』をライター・たまごまごさんに紹介いただきました。
東野幸治さんが鹿をモザイク無しで解体する狩猟企画や、自分たちの母親をオレオレ詐欺にかける、芸人の嫁をヘルス嬢風に写真撮って指名獲得を目指すものなどなど……面白い!という声とイマイチという人によって、企画によって随分当たり外れのあるピーキーな番組です。
今回の記事では面白さを紹介する導入編と、感想などを交えてネタバレについても踏み込んでいただきました。
だめだと言われるからやってみる『カリギュラ』導入編
Amazonプライムで配信されている『今田×東野のカリギュラ』。くだらなすぎたり、コンプライアンス的にNGだったりで「地上波アウト」になったボツ企画を集めてやってみよう、という番組だ。
禁止されるほどに試したくなる心理現象「カリギュラ」から取られたタイトル。完全に好奇心優先、笑える予定調和になるとは限らない。なので、不快なこと(エログロやケンカなど)に敏感かな、という人には、全くオススメできない。一方で、そう言われてピクリとでも気になる人にこそ、オススメ!
変化球で楽しむ「エロス」の世界
いくらAmazonプライムでも、18禁のもの(全裸など)は出せない。ここばっかりは仕方ない。
もっと変化球で攻めよう、ということで作られた企画が第10回「夜の嬢王は誰だ!?芸人の嫁 指名ダービー」だ。
芸人のお嫁さんには美人が多い。そこで風俗嬢としてコスプレをして写真を撮影。写真を実際のヘルスに並べたら、一般客は誰を選ぶか、という指名ダービー。
本当のヘルスの協力の元の企画。地上波で流したら、苦情が来る予感がビンビンする。でも、人の奥さんをヘルス指名するとか、死んでも言えないけどやってみたい願望、ある人いるでしょ男性諸君。
目を背けずに見せる「バイオレンス」
第一回から四回に渡って配信された『東野、鹿を狩る』企画。『東野・岡村の旅猿』で提案したところ、即ハネだったらしい。
東野幸治がサバイバル登山家の服部文祥と共に、実際に鹿を狩りに行くドキュメンタリーシリーズ。東野はお客さんではない。きちんと自らの手で、生き物を殺す。
服部が鹿を撃ち抜き、東野がナイフで喉を切る。内臓も全部モザイク無しだ。かつては地上波でも鶏をしめるシーンが映ったりしていたが、最近はめっきり「人が動物を殺す」系の映像は流れない。『カリギュラ』の中でも、見るのが無理な人が多いであろう映像だ。
構成自体が綱渡りな「タブー」に触れる
第二回の『うちの親は大丈夫!母ちゃん、オレオレ詐欺選手権』と第八回『うちの親は大丈夫!ガチ詐欺選手権』は、芸人の母親(一般人)に、本当にテレビ側が詐欺を仕掛けて、引っかかるかどうか試す、というもの。芸人は手出しできない。詐欺の研究者スタッフが、電話だったり、直接訪問だったりで、何も知らない母親にしかける。
「ドッキリ」と「詐欺」は紙一重だ。最後のフォローがなければ本物の詐欺。実際にあったテクニックで攻めているので、詐欺の最中は笑える要素がない。
当然、引っかかる母親も出て来る。空気もひりついていて、見ていてとてもしんどい。いやーな気分になりながら、ひっかかるのかどうかの結末まで見てしまう。
公式が「当番組は、番組の性質上、ご覧になられる方によっては一部不適切と感じられる場合がございます。予めご了承の上、お楽しみ下さい。」というだけあって、回によっては本当にキツイシーンもある。かと思えば、今田耕司と東野幸治のツッコミと、登場する芸人のノリで、ひたすら笑える回もある。
ぶっちゃけ、毎回が完璧に面白いわけではない。というのも、やってるのがそもそもボツ企画。今田と東野も実際やってみて「これはない」と結論を下す回もある。
そこもひっくるめて、やってみる過程が興味深いという趣旨。
この番組に関してだけ言えば、見たくない、と思ったら飛ばしてもいいと思う。だからこそのAmazonプライムビデオ。それでもあえてこの番組を少しでも見てほしいのは、変な感動がわいてくる、他にはない埋もれた宝のような回が多いからだ。
---
ここからネタバレという名の個人的感想
---
本作が気になる方はここまでで本編を見てください
---
謎の感動がわいてくることもある『カリギュラ』ネタバレ編
ここから先は、ネタバレ全開でいきます。やったことで得るものが合った回もあれば、全くなにもない回もある。そこで無理矢理いい感じの結末にしない、というのが番組のポリシーらしい。
第四回『ホームレスインテリクイズ王決定戦』は、154人のホームレスに直接交渉した上での、お手つきなしのクイズなのに、誰一人答えない、というどうしようもない映像に。
番組的には、大失敗にしか見えない。今田・東野は外側からVTRを見て、じゃあホームレスの人が才能を輝かせるにはどうすればいいのか考察する。ここが、面白い。
「エロス」を映したら、夫婦愛が見えた
『夜の嬢王は誰だ!?芸人の嫁 指名ダービー』は、風俗エロネタがダメな人は飛ばして下さい……って言いたいとこだけど、あえて、ぜひ見てほしい。
奥さんそれぞれ、渋ったり、夫の芸のためと割り切ったり、元芸人でノリノリだったりと、バラバラ。
今回は「ヘルスの写真撮影」というのがミソ。男性がグッと惹かれる、一番かわいくてきれいな姿を、プロが撮影する。全員、撮影を続けるうちにどんどんテンションがあがってくる。夫婦共に、いかに「かわいい妻」を撮るか試行錯誤。奥さんたちも楽しみはじめる。
実際にヘルスにやってきた一般客のチョイスに入ると、夫たちはものすごく真剣になる。「うちの妻は魅力にあふれているんだ」と、心から信じている。
妻が、他人から性的に見られることが、嬉しくてしかたない。夫婦共に、喜びがわく。笑いを挟みながら、見終わった後には幸福感が残る企画に。タイトルだけだと即アウトになりそうなゲスい趣旨も、やってみると意外といい話になるのが実証された、当たり企画だ。
「バイオレンス」は避ければいいというものではない
「東野、鹿を狩る」の一回目は、ネットでは「不愉快」という声が多かった。プロの狩人の服部文祥が真面目にやっているのに、スタッフ側が酷かったからだ。
大人数でついてきて物音を立てるわ、鹿が出ないからもういいんじゃないかと愚痴るわ、挙句の果てにドローンを撮影用に飛ばすわ。さすがにこれはガイドも言葉を失う。「何がおかしいんだよ、帰れよ」服部の叱責が飛ぶ。
スタッフの「撮れ高」志向と、服部の真剣さがぶつかり合う。間に挟まれた東野幸治は黙って両方を見守ることしかできない。「一番の地獄でしたね」というとおり、映像がピリピリしはじめる。
ところが回を重ねるごとに、現場は冗談を言えるような空気ではなくなり、真剣味を増す。
町中ではカエルすら殺すことができなかった東野。実際に山に入って歩き続けるうちに、スイッチが入る。鹿にナイフを入れ、喉を切る。真っ赤な血がゴボゴボあふれる鹿を引きずって歩く。解体場で、東野は胸骨を割り、身体をばらして、肉にしていく。
最初は「鹿が死ぬシーンなんて地上波で映せないよね」的な軽いテンションだから、鼻につくのだろう。それがどんどん命を取る撮影にシフト、真剣な空気に変わっていく。
「殺すことで命を大切にすることもできるし、本来そうしているはず。それなのに死を一生懸命隠してる。俺はそれには反発したい」という服部の言葉の通り、この番組は最後には、死を隠さず、命を大切に見せることに成功している。
次はイノシシやクマも狩りたい、という東野。本人が「やりたい」と望んで言っているので、過酷でも弱音を吐かないのが、『カリギュラ』のいいところ。
「タブー」を踏むと、現実が見えてくる
第二回と第八回の、芸人の母親に詐欺を仕掛けるシリーズは、今田と東野の周りでも評判がよかったらしい。
本来は興味本位のスタートで「お母さんたち本当にごめんなさい」だったのが、視聴者側の視点は「母親たちへの犯罪を未然に防げて感動した」と変わってきたことに、2人はびっくりしていたようだ。
「オレオレ詐欺選手権」は研究チームがガチで電話で仕掛けている。本当に詐欺にひっかかる瞬間は、テレビで映されたことはほぼないだろう。東野は「途中からただの犯罪ですよ」。全くです。
ジャングルポケット・太田の母親には「W不倫で妊娠詐欺」。2016年に300件以上も被害が出ている。声が違うことにも気付かず、すんなり信じてしまう母親。「W不倫だよね」「申し訳ありません」と自分から言ってしまうようにチームが誘導。簡単に振り回される。
とろサーモン・久保田の母親には「電車内で痴漢詐欺」。本人確認のために住所と電話番号を誘導尋問したところ、母親はポロリ。久保田も「あんなゆうてまうんやな、息子の情報も全部」とドン引き。
常識的には聞かないような質問をしても、気が動転すると母親は、なんとかしてあげたいと答え始める。
笑えるようなネタもあるが、母親があまりにも真剣なので、見ていて泣けてくる。映されているのは、息子に対しての、母親の無償の愛だ。
しずる・村上の母親は、詐欺に引っ掛けようとした面々に対し一歩も引かず、頑として譲らず、町中で怒号の口論に。一瞬の隙をついて、本当に110番通報。お母さんの対応パーフェクト。番組側はこのままだとマジでアウト! 慌てて制止。
詐欺・悪質商法評論家が監修した、本当の詐欺。注意喚起番組としては、これ以上無い生々しさだ。
地上波で流してもいいのでは?
これって本当に、地上波で流してはいけないものなのか? 鹿や詐欺は、たしかに企画段階だけ見ると、NGを出す気持ちはわかる。内臓の映像なんかは、見たくない人の方が多いだろう。
しかし実際見てみると、むしろこれこそ地上波で、多くの人が見るべきでは?とも感じる。
ブタや牛は毎日殺されているわけだし、命を獲る本当の映像はどこかで見てもいいのではないか。詐欺の手口と実際の反応を、こんなにリアルに見られる機会はそうそうない。
……というのは見終わったから言えること。
完成度が高いおバカ企画の「自作自演やらせドッキリ」なんかは、芸人もスタッフも視聴者も幸せになれる。もう少し調整すれば、地上波に輸出(?)しても全然おかしくない。
Amazonプライムビデオは、自主的に見なければ目に入らない。いつの間にか目に入るテレビと違う。だからこそ、この実験場でガンガン挑戦することに、意義がある。
この番組自体が、宝探し。そのうち失敗の企画の方が、普段見られない分クセになってくる。プロデューサー目線で、この企画がボツか否かを考えながら見るのがオススメ。「バラエティの映像作り」を考えるきっかけにもなります。
みなさんの「この企画はいけるでしょ!」を教えてください
企画が面白いのかどうかは、視聴者がジャッジするもの。
ぜひとも「この企画は地上波でもっとやるべきでは?」「Amazonプライムでシリーズ化できるのでは?」というのを、是非Twitterのハッシュタグ「#カリギュラ見てる」をつけて投稿してください。逆に「この企画はこうやったらもっといいのに」というダメ出しするのは、さらに楽しいです。「指名ダービー」は熟女ヘルスでやった方が魅力が増すんじゃないか、とか。
「カリギュラ」とは禁止されるほど試したくなる心理現象。地上波放送では、禁止された企画書の数々。マニアックすぎて視聴率が見込めない。コンプライアンス的にNG。くだらな過ぎる。しかしそんな禁止された企画書の中には宝が埋もれている。一度は闇に葬りさられた企画がいま蘇る!※当番組は、番組の性質上、ご覧になられる方によっては一部不適切と感じられる場合がございます。予めご了承の上、お楽しみ下さい。
この記事にはAmazonプライムビデオ『ドキュメンタル』シーズン1より、引用の範囲で複数のスクリーンショットを掲載しています。本画像の著作権者より通告を頂いた際はすみやかに画像を取り下げます。
この記事を書いた人
たまごまご @tamagomago
http://d.hatena.ne.jp/makaronisan/
ライター。エキレビ、このマンガがすごい!web、ねとらぼなどで執筆中。著書に「仕事のマナー「気がきかない」なんて言われるのは大問題ですっ! 」など。女の子が殴り合うマンガをこよなく愛しています。デレマスは大槻唯P。ミリオンはロコP。
⇒ 続きを読む