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考え探し続ける「人間」という存在を勇気づけるための物語『正解するカド』

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こんにちは、きんどるどうでしょうです。Amazonプライムビデオで見放題配信中のTVアニメ『正解するカド』のレビューをいただきましたのでご紹介。

『正解するカド』は"東映アニメーションとしては初めてTVシリーズでセル調のフルCGキャラクター表現に挑むプロジェクト"として、10年先も見られるアニメを目指して作られた意欲作。シリーズ構成・野崎まどと、それだけでわかる人には『なるほど、まったく先がわからん』ということが伝わりますね。

プライムビデオでは前日譚にあたる『第0話』が配信中なので、まずこちらから見てください。本記事は未見の方に配慮した序盤の見所解説、そしてネタバレまで含めた個人の見解の構成になっていますので未見の方は途中までお楽しみください。まずはどんな作品か知ってもらうために公式PVを貼っておきますね。**きんどうここまで

考え探し続ける「人間」という存在を勇気づけるための物語『正解するカド』

初めまして、らと(@revosiemit)と申します。普段はTwitterで好き勝手やっていたり、あらゐけいいち先生についての情報を収集したりしています。

さて、今回紹介する作品は東映アニメーション製作のTVアニメ『正解するカド』です。『正解するカド』は今年の4月から3ヶ月に渡って放送された作品でジャンル的には『ファーストコンタクトの要素を含んだSF作品』といったところでしょうか。

正解するカド 2017

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"「人よ、どうか正解されたい——」
巨大な立方体と共に、異方存在(異次元人)『ヤハクィザシュニナ』が突如日本に現れた。
ヤハクィザシュニナは日本という国を通じて、『人類を推進する』ためのオーバーテクノロジーを世界に提供しようと試みる。
異方存在やオーバーテクノロジーに対し、人類はどのような反応を示すのか。また、それらにどう関わっていこうとするのか。そして世界はどう変わっていくのか。
——人類、そして異方にとっての『正解』とは、一体なんなのだろう? "

というような導入の作品です。現代SF、という印象ですね。

総監督は「翠星のガルガンティア」の村田和也さん、脚本はSF作家の野崎まどさんが担当しており、製作はフルデジタル、メインの登場人物はセルアニメ調の3DCGで描写……と、実力の高いクリエイターが参加している・新しい技術を用いて製作されているのが特徴となっています。

声優についても少し触れましょう。キーパーソン『ヤハクィザシュニナ』を演じるのは寺島拓篤さん。『人間のようで人間ではない存在』という難しい役柄を見事に演じきっています。他にも三浦祥朗さん、M・A・Oさん、中博史さんなど広い年齢層の方が参加しており、その誰もが安定した演技で作品を支えています。

私が観て面白いと感じた部分は、大きく言って三つ。

まず、一つ目は『世界観』。私たちの住まう世界とそう変わらない『現実的』な日本に突如『非現実的』なモノが現れ、一日にして『非現実』を『現実』へと塗り替えてしまう——という状況に、とてもワクワクさせられました。

二つ目は『謎の提示と明かし方』。毎回といっていいほど『謎』が提示される作品なのですが、明かされたと思いきや新たな別の『謎』が提示されるため、放映時は毎週頭を刺激されっぱなし! 視聴を終えても脳みその回転が止まらない、というような状態がしばらく続くほどでした。

そして三つ目『衝撃的な展開の連続』。『与えられたオーバーテクノロジーをどう扱うか』という問題への解決策、 『異方存在』に関する真相、そして最終話。そのどれもが衝撃的、かつ実にワクワクさせられるものだったので、毎回「次はどんな展開が待ち受けているんだろう?」と興味を惹かれ続けていました。

特に終盤から最終話にかけての展開は、その衝撃度合いから(特に野崎さんの作風に慣れていない自分にとっては)困惑の感情さえ生じてしまうほど。果たして、一体最後は何が起こるのか? 気になった方はこの時点からでも是非ご視聴くださればと思います。

注目ポイントその1:この作品のおすすめポイント 〜さり気ない『伏線』〜

基本的に主要人物は3DCGで描かれていますが、『0話』は例外的に手描きの作画が多いエピソードとなっています

明かされては増えていく謎、登場人物それぞれの視点や想い、考えさせられるセリフ、予想もつかないような展開の数々……。それらのワクワクさせられる情報には、ふとしたところに『伏線』が紛れ込んでいます。……ネタバレになるので詳細は控えますが、前日譚の『0話』は忘れずに視聴しておくことをおすすめします

「気軽にアニメを観て癒やされたい」という時には不向きかもしれませんが、「なにか頭を使うアニメが観たい!」「要素同士の繋がりに驚かされるようなアニメが観たい!」という時にはまさに絶好といえる作品です。

一体何が伏線になるのか、あるいはどこが伏線だったのかを考えながら視聴してみるといいかもしれません。キャラクター同士の何気ない会話さえも後の展開を示唆するような言葉が紛れ込んでいます。

注目ポイントその2: 物語の鍵を握るもの 〜異方存在『ヤハクィザシュニナ』&謎の巨大立方体『カド』〜

名前が長いため、作中では『ザシュニナ』という略称で呼ばれることも。……そこで区切るんだ!?

まずは異方存在『ヤハクィザシュニナ』から。キービジュアルなどで見かける、例の『白い人』です。

2017年の7月25日(つい先日ですね)、『異方』と呼ばれる場所——こちらでいう『異次元』のようなところから、謎の超巨大立方体『カド』と共に地球へやってきました。地球に来た目的は「人類を推進・進歩させるため」とのことですが、果たして……?

見た目の無機質さや喋り方から『神様』のような印象を受けるヤハクィザシュニナですが、『知識に乏しいが知識欲は旺盛』『人間に対して素直なようで、時折強引な態度も見せる』……と、その性質はまるで『人間の子供』のよう。

人間の青年に近い姿をしていますが、内面的にはまだまだ未成熟な存在です。配られたパンをポンポン叩いて観察したり、パイプ椅子が似合わなかったりと、どこか愛嬌のある印象を受けるシーンも多く登場します。

そんなヤハクィザシュニナは、人間と出会ってどんな『成長』をしていくのか? ——というところも、この作品の1つのテーマといえるでしょう

大きさを印象づけるシーンが多く登場しますが、中でも『カド』が大移動を遂げるシーンは必見です。

続いて紹介するのは、謎の巨大立方体『カド』。例の『大きな謎の立方体』です。その大きさはなんと四方2km! 頂上からはスカイツリーも余裕で見下ろせてしまいます。『カド』の出現が確認されたのは『ヤハクィザシュニナ』と同じ2017年の7月25日。突如日本の羽田国際空港に出現し、乗客を飛行機ごと飲み込んでしまいました。

なんとも不思議な模様をしている『カド』は、簡単に説明すれば『異方』と地球を繋ぐための門のような役割を果たす物体……といったところでしょうか。

中に入ることもできますが、通常は『フレゴニクス』と呼ばれる壁のようなものによって拒まれてしまうため、ヤハクィザシュニナの許可が無い限り出入りすることはできません。その頑丈さは、なんと徹甲弾すら通さないほど! 普通の人間では、まず突破することは難しいでしょう。

『カド』は大きなものだけでなく、手のひらサイズの小さなものも登場します。大きく壮大な『カド』だけでなく、ヤハクィザシュニナの周りを浮遊する小さな『カド』の愛らしさにも是非注目してみてください

そうそう、羽田国際空港に出現した『大きなカド』ですが、作中時間の8月26日には『とある場所』への移転を果たすことになっています。興味があれば、同じ日付にいわゆる『聖地巡礼』へ行ってみるのもいいかもしれませんね。

注目ポイントその3:『ヤハクィザシュニナ』以外の登場人物

『国内最強の交渉人《タフネゴシエーター》』、『子供のような天才科学者』、『報道関係者』、果ては作中の日本における『総理大臣』など、この作品には様々な人物が登場しています。

異方存在『ヤハクィザシュニナ』だけでなく、それに対する『人間』たちも負けず劣らず印象的! 

例えばメインキャラクターの一人、国内最強の交渉人《タフネゴシエーター》・真道幸路朗。交渉の腕もさることながら、内面的にも人格者という超人! 『交渉』という行為について、『相手を一方的に勝ち負かすのではなく、お互いにとっての利益を模索すること』と考えています。ちなみに特技は『折り紙』の制作です。

子供のような天才科学者・品輪彼方。理論物理学者で、声は釘宮理恵さんが担当。見た目や性格から幼い印象を受けますが、実は26歳の立派な大人。考えることを楽しみながら、『異方』の技術を解明しようと奮闘していきます。

他にも色々な立場や肩書きの人物がたくさん登場するので『それぞれの登場人物の視点に立って観る』という視聴スタイルも面白いかもしれません。

また、この作品の登場人物の『最善を尽くすために思考しながら前に進んでいく』『自分なりに今を生きようとしている』『今という瞬間を楽しんでいる』といった姿は、まさに『生きている人間』そのもの。アニメ的なデフォルメこそなされていますが、それでもステレオタイプ的な『アニメのキャラクター』とは、どこか違うと思わせられるような部分がある……と、私は(勝手に)思っています。

序盤の楽しみ方

第0話・第1話は、登場人物と『カド』についてのチュートリアルです。第0話では人物、第1話では『カド』の詳細とその背景についての説明がなされます。ここでの一番の見どころは、第1話の『カド』からヤハクィザシュニナが登場するシーン。私はここで視聴を決めました。とにかくめちゃくちゃ興奮させられます。

第2話は1話の時間軸において、『カド』内部で何が起こっていたかの説明がなされる回。ヤハクィザシュニナがこの世界に来た理由、そして『異方存在・ヤハクィザシュニナ』と『国内最強の交渉人・真道幸路朗』の出会い&協力関係の成立には、今後の展開を予見させられます。

物語が本格的に動き出すのは3話からですが、まずは一度1・2話を観てみてください(0話はそれからでも大丈夫です)。そこでワクワクしてくれば、以降はきっと視聴が止まらなくなるはずですよ!

第4話から最終話にかけての個人的な感想・見解(ネタバレ)

この箇所は作品の結末や核心に関する重大なネタバレを含んでいます。「これ以上視聴する前に情報を入れたくない!」という方は最後にの項目までページを飛ばしてください。

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ここからネタバレ。ネタバレは見たくない方は最後をどうぞ。

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正解するカド 2017

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もう大丈夫ですよね? では個人的な感想・見解(ネタバレ)です。

この作品の序盤では、無限の電気エネルギーを得られる装置『ワム』が登場し、人類は『それらをどう扱っていくのか』について考えることになります。

そのため、最初は『人類が別次元の存在に出会い、(関係を築き上げていく一環として)提供されたオーバーテクノロジーをどう扱っていくかについて考える話』が主軸で、垣間見える『ヤハクィザシュニナの成長』という要素はあくまでも副次的なものであり、第8話以降の『異方に人類を連れていきたいヤハクィザシュニナと、それを止めようとする真道や徭』という展開に対しては「『第二部』的な内容に入ったのかな?」と私は解釈していました。

……『前半と後半での雰囲気の違い』に不満を抱いた、という人たちが見られるのはそのためかもしれません。

たしかに伏線こそ挟まれていますが、後半にかけての展開は少々描写や説明が足りていないように見受けられる点も少なくありません。本題が明らかになってくるまでに時間も掛かるので『提供されたオーバーテクノロジーをどう扱っていくかの話』を期待してしまうというのは、そうおかしいことでは無いと私は思います。実際、私もそれを期待していたところがありました。

では——視聴者の期待に応えられなかったこの物語の顛末は、果たして『不正解』だったと言えるのでしょうか?

私は「違う」と思います。

……最終話の視聴を終えた後、とある考察(解釈)を見かけ、非常にはっとさせられました。

「これは『異方存在に出会った人類の話』ではなく、『人類に出会った異方存在の話』だった」

この作品は、最初から『ヤハクィザシュニナの成長』を描いていたんです。作中でも説明がなされますが、オーバーテクノロジー云々はあくまでも『ヤハクィザシュニナが自身の目的を果たすために行っていた下準備』。つまり、物語的にも副次的な要素の一つに過ぎなかったのです。

作品の序盤でもはっきりと示唆されています。

第0話・第1話から、真道幸路朗のセリフ
俺たちは神様じゃないんだ。なにが正しかったのか、なにが正解なのか。そんなことは一生わからないだろう。けど、わからなくても探し続けるしかないのさ

そして、第2話でのヤハクィザシュニナのセリフ
常に思考し続けること。それが、世界における唯一の——正解だからだ

それらは、最終話の
——ヤハクィザシュニナ。『進歩』ってなにか分かる? 自分を『途中』と思うことよ」「ええ。ヒトも、異方存在も。——私も、あなたも。みんな『途中』
という幸花のセリフに繋がってくるのではないかな、と私は思いました。

『探し続けること』も『思考し続けること』も、それぞれなにかの『途中』であり、『進歩』を得るための行為。『成長』も『途中』の状態、『進歩』を得るための状態です。つまり、正解するカドは「ヤハクィザシュニナが『成長』を得るまでの物語」といえるのではないでしょうか。

……それは同時に、「考え、探し続けることのできる『人間』という存在を勇気づけるための物語」ということでもあるのかもしれません。

正解するカド 2017

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世界の終わりと始まり。人類は「正解」できるのか。全ては、想像を絶するファーストコンタクトから始まった。突如出現した謎の存在「カド」。異常事態に翻弄される日本政府。そして世界の行方は、ひとりの交渉官(ネゴシエーター)に委ねられる——。

最後に

そうそう、正解するカドを視聴した後は、同じ東映アニメーション製作・プライムビデオ配信対象の映画作品『楽園追放』も忘れずに観ましょうね! こちらはカドの結末に納得できなかった方にもオススメできる作品です。

楽園追放-Expelled from Paradise-

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自分自身にとっての『正解』とは一体なんなんだろう?

『正解するカド』や『楽園追放』を観た後に、そんなことを考えてみるのもまた面白いかもしれません。

考え続けるあなたの道(人生)が、どうか幸せにあふれた旅路となりますように!

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筆者曰く『最終回(第12話)に続く第13話』な公式『スピンオフ』小説。タイトルは誤植ではありません。『カド』ではなく『マド』なのです。

とある事情により電子書籍化が難しいとのことなので、気になった方はKindle化を待たずに購入してしまうことをオススメします。……おそらく、読めば理由が察せられることでしょう。

事前に野崎まどさんの著作をいくつか読んでおくと、より楽しむことができますよ!

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