ワニ男爵があちらこちらへと食道楽するグルメマンガ『ワニ男爵』
どうも。ハンハンス(hanhans7th)と申します。初めましての方は初めまして。そうでない方はどうも御贔屓に。今回紹介する漫画は岡田卓也『ワニ男爵』1巻目であります。
初見で『ワニ男爵』と言われて皆さまは何を想像されるでしょうか。ワニのようないかつい男爵でしょうか。あるいはそのまんまダイレクトにワニが男爵でしょうか。正解は後者。ワニが、男爵です。
ワニ男爵は、シルクハットに蝶ネクタイ、手にはステッキと、紳士スタイルをきっちりと決めたジェントルマンです。その言動も思慮深く、機知に富み、また性格的にも鷹揚で温厚。知識も豊富で非の打ちどころのない完璧な紳士と言えます。その紳士なワニ男爵が、作家でもあるワニ男爵を先生と慕うウサギさんと一緒に、あちらこちらへと食道楽する、というのがこの漫画です。
つまりグルメ漫画の一種と言えます。食べるものは多岐にわたり、牡蠣やうどん、たこ焼きなどに舌鼓を打ち、作家ゆえの高い表現力でそれを評価する、というのが基本的な流れです、が。
ワニ男爵はジェントルマンである、と書きましたが、しかしそれの奥には獣が眠っています。野生という獣が。 ワニ男爵は、偶にスイッチが入るとその野性を開放してしまうのです。
そうなってしまうと何も見境もなく、何が起きているのかワニ男爵自らも分からない、まさに暴虐の時間が訪れます。
このトリガーは何をもって引き絞られるのかがいまいち分からないのがこの漫画の怖さです。主に、過去のことを思い出す、ナイル川のこと野性全開で生きていた頃のこととか、そういうのを思い出すと、突然野性のままに動いてしまうようです。
ただ、そこにあるのは怒りではなく憧憬に近いものがあり、つまりどうしてそこで沸点が上がるのかよく分からないので、いつ他の動物(この漫画は基本的に人間はおらず、二足歩行の動物がメインの世界)を襲うか、というホラーに近い部分があったりします。
うさぎさんが僕をご飯とみてないですよね、と聞くのもむべなるかな。一応、そんなことする訳ないじゃないですか、とは言いますが、果たしてそれは本当にそうなのか。野性がそこにまで及ばないという保証はあるのか。そこがちょっと怖いところです。
とはいえ、その野性開放も毎度毎度ではありません。この巻では8話中3話でしかだしていないので、そこまで多い訳ではないのです。まあ、起きたらインパクト強くてもっとやっている印象ががありますけれども。
さておき。そんな野性のあるワニ男爵は、しかし、いやだからこそジェントルマンです。困っている人を助けることに躊躇しません。それが分かる話を二つ。
これは、ビアガーデンにきて骨しか食べられていないハイエナの家族に対して、直接お肉を渡すのではなく、頼みすぎたので食べるのを手伝ってくれませんか? という手管で振る舞うというジェントルマンらしい、相手の自尊心を傷つけない形での食事の誘い方であります。
大変紳士的ですね? その後も、ハイエナ父に感謝されるけど、子供たちのことをちゃんと考えてあげてくださいね? という流れにもっていくのでも本当にジェントルマンです。突くべきところを間違えていない。
こちらの画像の方は、恋をした象に奮起を促した後、その様子をみつつ、でも振られてしまった、というので優しく、悲しみを一緒に受け止めてあがているところです。恋は決して甘いだけじゃなく、苦みもある。でもだからこそですよ。という部分が大変滋味深い言葉になっています。
そして何気に最後にその彼女の香りをダクトで嗅ぎたい、というのは諫めている辺りもジェントルマン。終わったならさっぱりと諦めなさいという教えであります。ダクトで嗅いでいるのが変態チックだったのもありますけれども、そこも含めて今後は駄目よ、とする紳士らしい〆でありました。
ということで『ワニ男爵』、基本的にはグルメ系漫画で、食レポもまた良いものがありますが、それ以外のワニ男爵のジェントルマンなところと、それが一転する野性の持ち主なところがこの漫画の味わいを引き締めているかと思います。ワニ男爵のジェントルマンなところはまだまだあるので、食レポと共に気になったら読んでみてください。、
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ワニ男爵(1)
その名はアルファルド・J・ドンソン。ワニ。職業:小説家。楽しみは仲よしのウサギ、ラビットボーイとの食べ歩き(生ガキや讃岐うどんなど)。超ジェントルマンだけど、お店で時々「野生」が騒いでしまい…。モーニングで、作者も予想外の大反響! 動物好きも、食べ歩き好きも、貴族好きも、『あらしのよるに』好きもきっと満腹。ノーブルにしてワイルドな、なさそうでなかった漫画の誕生!
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— きんどう (@zoknd) July 31, 2017