こんにちは。リアル書店員のケス・ノングです。
さー、早川書房50%オフが始まりましたね! 日本人作家のSFのみというのがやや不満ではありますが、いや、それでも面白い本は山とあります。どんどん紹介していきますよ。お財布の紐緩めてくださいね。使い時です!
円城塔「エピローグ」
エピローグ
オーバー・チューリング・クリーチャー(OTC)が現実宇宙の解像度を上げ始め、人類がこちら側へと退転してからしばらく――。特化採掘大隊の朝戸連と相棒の支援ロボット・アラクネは、OTCの構成物質(スマート・マテリアル)を入手すべく、現実宇宙へ向かう(……)商品とする多宇宙間企業イグジステンス社の影を見る……。宇宙と物語に、いったい何が起こっているのか?
うおお、これが半額とは。まだ文庫になってないので、値段に躊躇していたあなた、今しかありません! 出た当時、もうこれ以外ないという感じで、ミステリ、SF、ノンフィクション他すべてひっくるめてケス・ノングの個人的年間ベスト1に躍り出た超傑作です。
ある知性が機械(人工知能)であるかどうかを調べるチューリング・テストを難なくクリアするOTC(オーバー・チューリング・クリーチャ)が我々の世界を侵略し始め、「世界の解像度を上げる」ことにより、人類は現実世界から撤退し、「こちら側」と言われる仮想世界に追いやられていた――。
もう、この設定だけで背筋がぞくぞくしてくるでしょ? この何言ってんだかわからないけど強烈に伝わってくるドライブ感。これこそがSFの究極的な醍醐味です。「常人には想像もできないことが想像できる」のがSF作家ですが、それを「一般人が想像できる範囲に落とし込む表現力」を持っているのが一流のSF作家です。まさに円城塔がその一人。
もはや「文学」というカテゴライズすらも超越しています。超おススメ!
夢枕獏「上弦の月を喰べる獅子(上・下)」
上弦の月を喰べる獅子(上)
あらゆるものを螺旋として捉え、それを集め求める螺旋蒐集家は、新宿のとあるビルに、現実には存在しない螺旋階段を幻視した。肺を病む岩手の詩人は、北上高地の斜面に、彼にしか見えない巨大なオウム貝の幻を見た。それぞれの螺旋にひきこまれたふたりは、混沌の中でおのれの修羅と対峙する……ベストセラー作家、夢枕獏が仏教の宇宙観をもとに進化と宇宙の謎を解き明かした空前絶後の物語。第10回日本SF大賞受賞作。
DNAの二重螺旋。それは、「進化」というものをこの上もなく体現した究極のデザインである――。これは、進化の物語であり、人の物語であり、神の物語であり、あらゆる物語すべてである。
「螺旋」の神秘に取りつかれたカメラマンは、幻視の螺旋階段を上るうち、岩手の詩人と融合する。詩人の名は宮沢賢治。二人は一人となり、わたしとわたくしは「私」となり、壮大な仏教世界をさまよい歩く。
観念的、哲学的な話に見えますが、さにあらず。徹底的なエンタメ畑で鍛えられたその筆は、恐ろしいリーダビリティで読者を引き込みます。エログロバイオレンスで一時代を築いた著者が、本来持っていた幻想性と詩情を開放し、かつ格調高い筆致で世界そのものを描き出します。何度読んでも面白い。日本SF大賞受賞作。
あいにく、セール対象は上巻だけですが、上巻を読めば必ず下巻も読みたくなります。セットでどうぞ!
上田早夕里「華竜の宮(上・下)」「深紅の碑文(上・下)」
華竜の宮(上)
ホットプルームによる海底隆起で多くの陸地が水没した25世紀。人類は未曾有の危機を辛くも乗り越えた。陸上民は僅かな土地と海上都市で高度な情報社会を維持し、海上民は“魚舟”と呼ばれる生物船を駆り生活する。青澄誠司は日本の外交官として様々な組織と共存のため交渉を重ねてきたが、この星が近い将来再度もたらす過酷な試練は、彼の理念とあらゆる生命の運命を根底から脅かす―。日本SF大賞受賞作、堂々文庫化。
ほぼすべての陸地が水没した25世紀の地球。わずかな陸上を支配するエリート層と、海に生きることに特化した海住民。その格差と自由の対立は、まさに現代社会にそのまま置換できる普遍性を持っています。
主人公の外交官の性格・行動が非常に現実味があり、そこもリアル。そのうえでの、海上民の用いる「魚船」という生物ガジェットや、AI秘書などのSFとしての堂々たる設定がいろいろくすぐってきます。SFならではのスケール感も味わえ、続編「深紅の碑文」がまた傑作。日本SF大賞受賞作。
深紅の碑文(上)
陸地の大部分が水没した25世紀。人類は僅かな土地で暮らす陸上民と、生物船〈魚舟〉とともに海で生きる海上民に分かれ共存していた。だが地球規模の環境変動〈大異変〉が迫り、資源をめぐる両者の対立は深刻化。頻発する武力衝突を憂慮した救援団体理事長の青澄誠司は、海の反社会勢力〈ラブカ〉の指導者ザフィールに和解を持ちかけるが、頑なに拒まれていた――日本SF大賞受賞作『華竜の宮』に続く長篇。
藤井太洋「オービタル・クラウド(上・下)」
オービタル・クラウド 上
2020年、流れ星の発生を予測するWebサイト“メテオ・ニュース”を運営する木村和海は、イランが打ち上げたロケットブースターの2段目“サフィール3”が、大気圏内に落下することなく、逆に高度を上げていることに気づく(……)“サフィール3”のデータを解析する和海は、世界を揺るがすスペーステロ計画に巻き込まれて―第35回日本SF大賞、第46回星雲賞日本長編部門、ベストSF2014国内篇第1位。
Kindleで自費出版した「GENE MAPPAER」が編集者の目に止まり、紙版で再デビュー、三作目の本作にして日本SF大賞受賞、さらには日本SF作家クラブ会長就任と、飛ぶ鳥を落としすぎてもはや鳥は絶滅状態です。
さてこの「オービタル・クラウド」。エンタメ小説としてありえないほど完璧なのです。細やかな設定、グローバルなストーリー展開、魅力的なSFガジェット、際立ったキャラクター造詣と、そのままハリウッド映画にしてしまえる完成度です。ていうか、僕がプロデューサーなら即ツバつけておきます。それほどに面白い。なんで新人がこんなすごいものが書けるのか。
「なんかおもしろいのねーかなー」と迷っている方、これを読みなさい(命令か)!
いかがでしたか?きんどうさんからは、「初心者向けに」と言われていましたが、一番おススメしたかった「エピローグ」が初心者向けとは言えないため、今回は趣味に走らせていただきました。次回初心者向けを書きます!
SFは文学形式として、最も素晴らしいものだと信じています。上記以外にも面白い本は山ほどあります。楽しいKindleライフを!
この記事を書いた人:ケス・ノング
某チェーン書店で文芸書・文庫を担当。自分は人に薦めるくせに、人に薦められると読みたくなくなる天邪鬼。昔は年間300冊は読んでいたが、年々集中力が衰え今は年間80冊くらい。
Amazonプライムのおかげで映画やドラマも見てしまうので全然時間が足りなくて一週間が四週間くらいあればいいのに、とかバカなことばかり考えているからよけい本が読めないという悪循環に陥りがちな中年真っ盛りです。
きんどるどうでしょうさん(https://t.co/RE48GleBBa)のところで、本の紹介をさせていただいております。サイトの「ゲスト」をクリックすると、私の紹介した文章が読めます(「ゲスト」のすべてが私のものではありません)。
— ケス・ノング (@kesnong) March 31, 2017
Kindleハヤカワセール(4月10日まで)
\ ハヤカワSFが半額 /
『虐殺器官』『天冥の標』など早川書房 人気のSF 408冊がAmazon電子書籍で50%OFF
→Kindleセール(4/10まで) https://t.co/o9zG1FmlQD pic.twitter.com/DT7VFPwapJ— きんどう (@zoknd) March 30, 2017
注意事項:Kindle本の価格は随時変更されています。また、本サイトでは購入された書籍や内容についての責任は持てません。ご購入の前にAmazon上の価格・内容をよく確認してください。良い価格で良い本を。きんどるどうでしょうでした。